あの頃のように笑いあえたら

「ね、源くんって彼女いるのかな?好きな人、とか」

え?源に、彼女……?

そういえば、聞いたことなかったな。

ざわついた胸が、ギュッと捻られたように痛くなる。

「ごめん、知らないなぁ。源、あんまり自分のこと話さないから」

「……そっかぁ、ありがと。また源くんのこと教えてね」

長い髪をフワフワさせて、彼女は行ってしまった。

積極的で、可愛らしい彼女。

こんな子に好意を持たれたら、誰でも嬉しいだろうな……源も、そうかな。

今日は、スタジオに源の姿はない。

バイトがない休日は、何をしているのかな。

まさか、彼女とデート?

よく考えたら私、源のことあんまり知らないのかも。学校でも、バイトでも一緒なのに。

胸が、ズキズキする。

恋って、楽しいことばかりじゃないんだな……。

その日の撮影は、なんとなく、うまくいった気がしなかった。

こんな些細なことで、動揺してしまうのに。今の私には、告白なんて考えられないな。