でもそんなことで悩んでるなんて初子ばあちゃんには口が裂けても言えないから、気取られないように笑顔を作り今日も初子ばあちゃん家に訪れる。


今日はクリーニング屋のおばさんからもらった秋なすをおすそ分け。


なんでも、種を蒔き過ぎてしまって食べきれないほど実っちゃったんだとか。

今朝、診療所に来たおばさんが皆に配っていった。


なぜか私の分とお父さんの分が別々で、結果的に藪下家の分が大量となってしまったので、お昼休みを利用して初子ばあちゃんにおすそ分けのおすそ分けだ。


何にしようかな。煮浸しもいいし、焼いても美味しいよね。


そんなことを考えて、お腹が鳴りそうになるのを我慢しながら初子ばあちゃん家の門を開けると、目の前に黒いものが横切って行った。


「あ、黒猫だ。」


横切ったものの正体は黒猫。

俊ちゃんが居たら卒倒しそうだな、なんて思いながら玄関の戸をたたく。