それは、小さな街の小さな恋。



「でもこの前、俊ちゃんが診療所で診察した日があったんでしょう?」

「え?まあ、少し前にあったけど。」


お父さんが、恩師のお通夜に行った日のことかな。

あの日は確かに午後から俊ちゃんに診察してもらったけど。


「あれって、近々俊ちゃんが藪下診療所の跡を継ぐからその予行練習じゃないかって皆で言ってたのよ。」


言ってたのよ、って。全然ちがうよ!


「あれは、お父さんに急用が出来たときたまたま俊ちゃんが居たから代打に使っただけであって、」

「あ!」


必死に説明してるのに、おばさんは急に声をあげてグラウンドへと視線を移してしまった。


何事かとグラウンドの方を見ると、ちょうど俊ちゃんがいい球を打ったところだった。