それは、小さな街の小さな恋。



「病院から電話あったら教えてくれ。まあ、今日はねえだろうけど。」

「わかった。」


ああ、そういうことか。
今日の私のお仕事は電話番なのね。


俊ちゃん、本当に大丈夫かな?夜勤明けなんだよね。


一瞬心配になったけど、それももう吹き飛んだ。


だって俊ちゃんの背中、なんだか凄く逞しくて、頼り甲斐があって。

ユニホームだからかな。なんだか、格好良くみえる。


酒屋のおじさんに引き摺られて行ったさっきとは大違いだ。


「俊ちゃん、頑張って!」


気づいたら、グラウンドへと向かっていく背中に声をかけていた。


「ホームランね!」

「おう。」


頼もしい返事をした俊ちゃんは、足を止めないまま少しだけこちらを振り返り、右手を軽くあげるとそのまま行ってしまった。