「それが、周平が戻って来るって聞いてから急に元気になっちゃって。」
あらら。おじさん、よっぽど富澤君に帰って来て欲しかったんだな。
まあ、そうだよね。
富澤君は一人っ子。一人息子である富澤君が『継がない』と言えば富澤八百屋はシャッターを閉めるしかなくなってしまうのだから。
藪下診療所だってそうだ。
私は医者にはならなかった、なれなかった。
だから誰か私の代わりに、一生藪下医院で働いてくれる人を見つけないと。
そして、次のバトンを受け取ってくれる人も。
お父さんは何も言わないけど、やっぱり今のままでは不安だということくらいは分かる。
だって、このままじゃあ戦後から頑張ってきた藪下医院がなくなってしまうということだから。

