それは、小さな街の小さな恋。



2度塗りの日焼け止めに、うでぬき、日傘。

完璧に武装して訪れたのは、河川敷にある野球場。


思ったよりも人が多い。


今日の対戦相手は、2丁目の商店街だ。

2丁目商店街は、うちの商店街のすぐ裏手に位置しお互いにライバル視しているバチバチの関係。


今日は熱い試合になりそうだ。


「あら?かのちゃんも来たの?」

「うん。一応、応援しに。」


うちのチーム側のベンチに向かうと、真っ先に声を掛けてくれたのは八百屋さんの奥さん。

富澤君のお母さんだった。


ふと、グラウンドを覗き整列をする選手達を見るも富澤君はいない。

居たのは富澤君のお父さん。


「おじさん、腰痛は大丈夫なの?」


たしか、おじさんの腰痛が原因で富澤君がこっちに帰って来たって話だったはずだ。