「なんで、俊ちゃんがうちの病院にいるの?」
お父さんと話しているのは、お隣に住む北上 俊也。通称としちゃん。
所謂私の幼馴染だ。
「お!鹿乃子ありがとう!じゃあ、行ってくるぞ。」
お父さんは、呆然とする私から喪服を受け取ると鞄を抱え、そのまま診療所を出て行ってしまった。
未だ混乱中の私はお父さんの背中を見送ると診察室に入り、俊ちゃんに詰め寄る。
「え?午後からは、俊ちゃんが診察するってこと?」
「ああ。今日はうちの病院が休診日で今帰ったところだったんだけど、丁度大二郎さんに捕まったんだよ。」
大二郎さんとは、うちのお父さんのこと。
疲れた顔をした俊ちゃんは、椅子に深く腰掛けたまま溜息をつく。
そんな俊ちゃんには悪いけど、すごく助かった。

