それは、小さな街の小さな恋。



14時から診療開始なので、それまでには電話連絡をしとかないといけない。


もしかしたら、パート医療事務員の加代さんがやってくれてるかも。


私はあまり勉強ができる方ではなかったので、医者という道は選ばなかった。

というか、選べなかったというか。

商業高校卒業後は、専門学校で医療事務について学び、診療所に就職した。


私、藪下 鹿乃子は藪下診療所の一人娘で、亡き母に変わり事務・経理を担当している26歳独身だ。


彼氏なし、今のところ結婚願望もない。

周りからは、診療所の跡取りを見つけろと言われているけど。


お父さんの、『鹿乃子のペースでいい』と言う言葉に甘えさせて貰っている。