それは、小さな街の小さな恋。



クリーニング屋さんを出ると、喪服を抱え、また足早に商店街を後にする。


私の住むこの街の目玉であるこの商店街は、戦前から続くという歴史のある商店街でなかなか味がある店が連なっている。


その商店街の入り口アケード手前にある藪下診療所こそが、私の職場であり、実家だ。


隣街の大きな病院が、車で少しのところに位置するので患者さんはぼちぼちと言ったところ。


でも、ありがたいことに戦後から続くこの藪下医院は地元の人たちに愛されており、今のところ経営には困ってない。


普段はおばあちゃんやおじいちゃんのお話を聞いたり、高血圧のお父さんお母さんに薬を渡したり、風邪の患者さんを診たり。


あとは、隣街の大きな病院に紹介状を書いたり。