俊ちゃんは、高校を卒業すると隣街の大学に通いそのまま隣街の病院に就職した。
医者になろうと思ったきっかけは、うちのお父さんへの憧れから。
俊ちゃんにとってうちのお父さんは父親代わりのようなもので、昔はよく二人でキャッチボールをしたりと、娘の私が嫉妬するほど仲がいい。
診療所でもよく遊んでたしな。
そんな私にとって、家族のようなとしちゃんは周りに言わせれば『イケメン』らしい。
一重のシャープな目元は確かにイケメン要素だけど、はっきりした顔立ちの男の人がタイプの私はどこか物足りなさを感じてしまう。
まあ、加代さんが言う通り背も高くて、高収入なお医者さんだし、昔からよくモテていた。
俊ちゃんが高校生のころは、よく女の子と歩いてるの目撃したな。
そんな俊ちゃんの高校時代を記憶の中で辿りながら握ったおにぎりを持って診療所へと戻る。
午後の診察時間まであと20分。
俊ちゃん、少しは眠れたかな。

