smorking beauty

「ほかに何があるんです。もちろん、これはバレンタインの成れの果てです」

完璧に時期はずしましたけどね、と日村は自嘲した。

「日村君、帰国子女だっけか? 日本は確かにチョコレート戦争だけど、でもあれ立場逆だって」

「もちろん知ってますよっ。本当に相変わらず突っ込みどころが違いますね。高階さん、アナタにはこのくらいベタにいかないと、一生意識してもらえそうにないって俺も学習したんです。っていうか、本当に分かってます? 念のために言っておくと、別に日ごろの感謝を込めてとかってやつじゃないですよ、俺のは」

日村の柔軟なのか世間とずれているのかよく分からないキレ気味の告白に、綾香の首筋は熱くなる。寒かったはずの廊下の気温が急に上がった気がした。

「高階さん、とりあえずこれから付き合ってください。メシまだでしょ?」

「へっ、ああ。……うん」

綾香は照れくささのあまり、うまい言葉が出てこない。

日村は「頷いたからには撤回できませんからね。今夜は俺の切々とした思いを聞いてもらいますから、覚悟してください」とすっきりとした笑みを浮かべて、煙草の火を消した。

綾香は後輩のやけに男くさい笑みに見惚れたあとで、我に返る。


―― まだ禁煙は無理かも。


日村のせいで当分落ち着けそうにもない、と思う綾香だった。




-- End --