尊と別れた次の日。
会社に着いて仕事をしていた。
尊が去年のクリスマスにくれた、お揃いの指輪を外した事に気が付いた、隣の席に座っている同期の真尋(まひろ)が話しかけてきた。
「桃華、何で今日は指輪してないの?」
「あぁ……それは」
私はパソコンの画面を見て入力しながら、真尋に昨日の事を話した。
「別れたっ!?」
急に大きな声で真尋は言って、入力していた手を止めて真尋の口を抑えた。
「シーッ!声がでかいよ!」
真尋も周りに居る人の視線に気づいて、申し訳なさそうに謝った。
「ごめん。ビックリしちゃって。
だけど海外なんてまた急だけど、嫌いになった訳じゃないのに別れなきゃいけないのも辛いよね。
恋愛より仕事を頑張りたいと言われたら、着いて行くなんて言えないもんね。」
「うん……だけど尊を応援してやりたいんだ。」
真尋はそれ以上、何も言わなかった。
尊も仕事を頑張るんだから、私も暫くは仕事を頑張りたい。
簡単に海外に着いて行くとも言えないし、会いに行くにも距離やお金もかかる。
好きだから別れたくないと言っても、尊は海外に転勤してしまうのは変わらない。
ハッキリと恋愛よりも仕事を頑張りたいと言われたら、何もいえないし応援するしかない。
でも、頭の中ではそう思っていても、嫌いで別れたわけじゃないから、急に連絡も無くなり、会えなくなると思うと辛いのは事実だ。