天狗に愛されて



〈…アンタは幸せだね。
無知であるから平然としてられる。

そのせいで譲葉は傷付いた。〉


「俺が無知だと…?」


〈この泉の水が何か分かるかい?〉


水がどうかしたのか…?
普通の水とは違って透き通って見えるだけだ。


考えていると雲で隠れていた月が顔を見せ、
辺りが明るくなる。


「……な、まさか!」


〈オレら妖にとって毒にしかならない
忌々しい神水さ。〉


譲葉を抱える天狗も身体に傷を負っていた。