天狗に愛されて



ジュッ!


『…ッ!!』


触れた瞬間に浄化しようとする神水。

足を進め、深みに入る度に浄化は進んでいく。


浄化なんて聞こえは良いけど、
その対象の妖にとっては苦痛でしかない。

それで救われる筈がないのにね。

思えば私が一度も妖を祓えなかったのは
自分が半妖だから祓えなかったのかも。

それをあの男は嘲笑っていたんだろうか。


『あんな奴らの思い通りになる位なら…!』


この泉で死んだ方がマシよ。


〈譲葉ッ!!〉


聞こえたのはいつも私を泣き虫と笑う天狗の声。


ズルいじゃない…今日は名前で呼ぶなんて。