初デートは夏。


 前の晩は眠れなくて寝不足になった。


 待ち合わせに遅れそうになり、慌てて向かうと彼女が手を振って待っててくれた。


 彼女はハイビスカスの浴衣を身に纏っていた。
 ほかにも浴衣を着ている人はいたが、彼女はそれ以上に光り輝いていた。


 彼女の美しさに眠気は吹っ飛ぶ。
 棒立ちになる僕に、彼女は手を引く。


 金魚すくいに射的、いいところを見せようと思っていても空回り。
 へこんでいると彼女はリンゴ飴を差し出してくれた。


 彼女は僕の失態を流してくれている。
 多分、気を遣っての事だろう。


 情けなくて立ち直れない。


 その時、濃紺の空に無数の花が咲く。
 足を止め、その光景に釘付けとなる。


 僕は横目で彼女を窺う。

 学校の時とは違う、彼女。


 ドキドキが止まらない。
 花火は一瞬で終わってしまうのに、彼女に釘付けになってしまう。


 帰り際、彼女はハイビスカスの浴衣を翻す。


「来年も見に行こうよ」


 月明かりに照らされた笑顔に心臓が破裂してしまいそうだ。


 また僕は、寝不足になる。