山口は三十代後半くらいだろうか。パリに来て十五年だと言っていた。 「ねぇ、ふたりとも、好き嫌いは?」 「特にないです」 「わたしも」 「じゃあ、中国料理でもいいかな?」 「え? はい」 てっきりフランス料理のつもりで来ていたので、ちょっと意外だった。