♠涙に秘めた思い
結衣side

香さん…。ごめんなさい。私はひどいことをしました。
心の中で何度も謝った。
私は逃げ出してから色々なところを転々とした。
これ以上誰にも迷惑はかけられない。
でも、私の足が止まった先は。香さんの家。
私は香さんが好きなんだ。
誰かのために、何かのために、香さんを忘れるなんてことできないんだ。
今、分かったよ。
でももう遅かったね。きっと香さんは私のことなんてもう思ってくれてない。
私が悪いんだ。涙が止まらない。
一番失っちゃいけないものを失ったんだ。
自分のこの手で離してしまったんだ。
「結衣…?」
声のするほうに顔を向けてみるとそこには
「香…さん。」
「こんなところにいた。結衣。」
「なんで、香さん。ここに…。」
「なんでって、ここ俺の家だし。」
香さんは少し笑いながら言った。
私、謝らなきゃ。許してもらえなくても。
「香さん…。私…。」
「あぁ、いいよ。何も言わなくて。分かってるから結衣が言いたいことくらい。
でもね、俺はその言葉より「す」から始まる言葉が聞きたいな。」
「す、すきです。…大好きです!」
そういって私は香さんの胸へと飛び込んだ。