放課後、
伊都は透を捕まえようと教室の外で待っていた。

すぐには教室の中に入らず、ドアから、透の様子を見ていた。

透は明るくて、誰とでも仲良くなれる。

今だって、周りの子達と自然に会話してる。

途切れることなく、透が人の輪の中心にいて、彼に誰かが彼に話しかける。
明るい話し声が伊都のところまで漏れてくる。

また、今度にしようかなと思った時、

「あっ、悪い。ちょっと外すわ」

透ったら、人と話してる途中で、こっちに駆け寄ってきてしまう。

「誰?彼女」

透が振り返って言う。

「おう」

周りにいた女の子達を置いて、透がこっちに来る。
「マジで?」

「ほんとに彼女とかいたんだ」

「ええっ」っていう悲鳴に近いのも。


「話し終わるまで待ってたのに」伊都が声を掛ける。


「いいよ、たいした用事じゃないから。
それより…よかった。
お前の彼女、全然顔見せに来ないって疑われてたから」


「そうだったの?」


「うん。それより何?用事でしょ?」


「もうすぐ、ゴールデンウィークだから…透の予定どうなってたかなあと思って」


「たしか…前半は予定が入ってたと
思うけど、後半はないと思う」


「じゃあ、都合がいい日教えて」


透は、伊都の手をぎゅっとつかんだ。


「だめ。都合がつくだけじゃなくて、ずっと一緒にいろよ」


「ずっとって…」


「仕事はないんだろ?だったら、俺が練習のときは学校に来て、
伊都が家で家事をするときは、俺が伊都の家にいる」

「そんなふうにできるかな」

「じゃなきゃ。もっと普段から時間作れよ」

そう言うと透は、
伊都の体をぎゅっと抱きしめた。