「ケンサク、電話がなってる」
葵に言われ、ケンサクは電話をとった。
会社に入ってから、電話をとる役目はケンサクだった。
この中で、一番下っぱっていうのと、一番、日本語が怪しいからだ。
「もしもし…」なんだっけ…
実はケンサクは、電話が本当に苦手だ。
出来たら、呼び出し音と同時に逃げ出したいくらいだ。
日本語は、日常会話だけなら、何とか不自由ないレベルまで上達した。
問題は、漢字だ。
多樹によく、中国系アメリカ人だろうと、からかわれるがケンサクの家では全員が英語を話しているから、広東語もまして日本語など初めて聞く言語と同じだった。
理貴を追いかけて、アメリカから日本にやって来たケンサクは、日本に行く飛行機の中で、
初めて日本語を勉強した。
たまにお祖父ちゃんと話す時は、広東語の知ってる言葉を並べるだけだ。
相手が知らない言葉を使った時に、目の前に相手がいればすぐ聞き返す事ができるけど、電話だと難しい。
英語で話していいよ、と言われればそこまで苦手じゃないけど。
早口で一方的に話されると、何離してるのかちゃんと聞き取れない。


