ハイスクール・カンパニー




来栖は、日本に来る必要は全くなかった。

理貴が気まぐれに帰るなんて言い出さなければ、アメリカの方が日本より適した環境で過ごすことができた。


彼は、アメリカで、好きなだけ専門性を高められる環境で、おもちゃを与えられるようにコンピュータを学んだ。

アメリカのシリコンバレーで面白そうな事業を見つけて起業するか、アメリカの大学で何かしらのポストに就くか選べる道はいくつもあったのに、やっぱり、理貴の隣にいることが一番面白いと思ってやってきた。


彼は、高校生に行く必要はないと思っていたし、高校生なんて柄じゃないって思ったけれど、こっちに来てみると、日本で高校生の以外の身分の17歳というのは恐ろしく厄介だった。


すでにアメリカで物理学と数学の学位を得て、全米トップテンの大学院からも入学許可を得ていたし、シリコンバレーで企業もできたと話してみても、ここでは大風呂敷を広げた単なるニートだと信用してもらえない。


この俺に、向かって何てこと言いやがる。


来栖は、最初こそ反発したけれど、今では、それが逆に面白いのかもと思えるようになっていた。



メンバーの中で、来栖も高校生になる理由は、学力的には不要でも、身分証明書のために、必要だと思っている。


来栖は、会社には出社せず、メールやSNSで連絡をとる。


来栖は、理貴とは、小学校時代からの古い付き合いだから、ほとんどのことが電話で用事は済んでしまう。だから、わざわざ会わなくてもいい。


彼は、コンピュータの扱いに優れていて、都内のどこかで、ものすごい数のコンピュータに
囲まれているとか、たまに起こる、ハッキング事件の首謀者ではないかと噂されている。


でも、本当は来栖がオフィスを別にしてるのは、使ったコンピューターの電気代が、とんでもない金額になって、理貴がマンションから追い出したのが真実だった。