理貴が朝食を食べ終え、コーヒーを飲むために伊都のところへやって来た。


「お食事、全部召し上がりましたか?」

理貴に対する気持ちは、日を追うごとに親しさが増していいる。

そうすると、逆に言葉遣いで、距離をおきたいという気分になると伊都は思った。



「伊都の作ってくれたものなら、何でも食べられる。それに良く眠れる」

伊都は、食べ終えた食器を、理貴が自分の手で持ってくるようななったのを、微笑ましく思った。でも、顔にはあまり出さないようにしている。


家に来た、伊都の家の弟はちゃんと、自分で食べた後の食器を片づけるとケンサクにからかわれてから、理貴もそうするようになった。


理貴にたっぷりとコーヒーを注いで、洗物を取り出しにランドリーに移動する。

洗濯をすることまでは、契約にないけれど、毎日くたくたになるまで働いてる理貴を見てると、放ってはおけない。つい、契約にないことまで手を出してしまう。


いつの間にか、理貴が後ろにいて、腕を回して抱きしめてくる。


「理貴さん、少し離れてください。動けません」


「動けないなら、ちょうどいいじゃないか」
二人きりだと、理貴もこんなふうに甘えた態度をとってくる。




「ふざけてると、冷たくしますよ」


「出来るものなら、やって見るがいい……」


といっった瞬間に、伊都は振り返って、理貴の頬を水仕事をした冷たい手でバチンと挟んだ。


本当に冷たい手が、ピタッと頬に当てられ、理貴が大きく目を開く。


「うっわっ、何すんだ!!」


「わたしちゃんと断りましたよ」

本当に、最近はいたずらが過ぎる。
少し控えてもらわなくては、来栖さんが心配している通りになってしまうと伊都は思う。