ケンサクは、こういう密集した場所に住んでる人の家に招かれるのは初めてだった。
ガチャッとドアが開いて、中から人が出てきた。
「あっ、いらっしゃい。入って」
本当に、伊都が出てきた。
「海?ケンサクさん来たよ、リビングに案内して」
伊都によく似た男の子が入ってきて、興味深そうに見ている。
ケンサクは、ほぼ同じ目線の高さの男の子に優しく微笑みかける。
他にもいるんだよな。人間が。
ここで、何人暮らしてるんだ?
「何それ」
少年は、ぺこっと形どおり挨拶すると、ケンサクが持っているいくつかの箱を見て言った。
「海?お客様お通ししたら、陸を呼んできて」
「はーい」


