「あんた、伊都に何の用?」
「君こそ、伊都ちゃんの何?」
来栖は、女の子に痛い思いさせたらだめだろうと相手をにらむ。
「来栖さん、私、透と付き合ってるんです」
「そうなの?伊都ちゃんボーイフレンドいるんだ」
「透、この人来栖さん。会社の人なの」
「それが何だ。いくぞ、伊都」
透は、まだ強引に伊都の腕を引っ張ろうとする。
「ちょっと待って、透、私行かなきゃ行けないの」
「お前、いっつもそうじゃないか。仕事ばっかりって。いったいなんなんだよ」
「悪いけど、急ぐんで失礼するよ」
来栖が、透の胸を押して伊都から引き離した。
やっぱり、有無を言わせないとこがある。
「ごめん、透。今度必ず時間取るから」
「勝手にしろよ。もう、俺はもう、伊都の面倒なんか見ないぞ」
「透?ちょっと待って!今その話は止めて」
「いつするんだよ。いつも時間がなくて、俺のこと何かどうでもいいくせに」
「ごめん…私が悪いの」
「そうだよ。お前が悪いだろ?」伊都はうなずいた。
「内藤っていう、鷹揚の生徒会長だって?そいつのとこ行くのか?」
「ごめん、透」
「そんなやつ、お前の相手になるわけないだろ?」
「相手になんてしてもらおうと思わない」
「なに言ってんの、お前。そんなことのために、俺のことあきらめるのかよ」
「ごめん、透。私にとって大したことじゃないの。メンバーになって理貴さんを全力で支えたいの」
「くそっ…止めろよ、そんな大変なやつ。遊ばれてるだけだって…」
「それでもいいと思えるの。理貴さんがすることは何でも受け止める…」
「お前は、バカだよ」
「うん…」
「もういい、行けよ」
「透、ごめん。あと、弟たちのことありがとう…」
「いいよ、そんなこと。じゃあな」


