「あれ?何してるんですか?」

伊都が出社すると、仕事をしているはずのケンサクが、ミーティングルームで教科書を広げて、勉強していた。


「科学と化学?これ、どうちがうの?」
うわあっーっと叫んで頭を抱えている。


「漢字の意味ですか?」

「ああ」

「ケンサクさん、勉強する必要ないくらい、優秀だったんじゃないんですか?」

いつも、学力が高いことを誇りに思っているケンサクが、漢字で苦しんでいるのを見て、伊都もからかいたくなった。


「あーもう!!高校レベルの化学の単位なんて、とっくに取ってるよ!ただ、阿保教師がひらがな表記は減点って言い出して、満点とってもそこから半分引かれたら、赤点になるかも知れないってユウに言われて…」

「ここは日本ですから、それが普通です」
葵が当然だという。