伊都は、掃除と食事の仕事を朝の通学前済ませると、夕方会社に来てからは、お弁当のビデオの制作に関わった。
「ええっ、また取り直し!」
伊都が、また動画を止めたので、ユウがうんざりしながら言った。
「やっぱり、きちんと説明しなきゃだめ。肉を切ったまな板や包丁は、ちゃんと洗わなきゃ。いい加減にはできないの。大人なら常識でも、子供は知らないから、私のやることをそのまま真似しちゃうでしょう?」
「わかった。じゃ、もう一度」ユウが仕方なく応じる。
「ねえ、伊都ちゃん、音楽つけたり振り付けしたりするのはどう?」
「そっちのほうが、小さな子は見てくれるかも」
ありがとう、葵さん。
「そっか。歌にあわせて包丁振るう?」
「それは危ない」ユウが止めた。
「なに、葵は何か具体的な考えあんの?」
「コンセプトはいいと思うよね。そうだな」
「うん」
「でも、必要なのは、普段、料理なんか興味もないけど、必要に迫られて、やらなきゃいけない立場に置かれた子達よね」
そうだ。両親が仕事で自分でご飯を作らなくちゃいけない子たちだ。


