「こんなとこで何してんの?」
背の高くて髪も長い。
黒っぽい服装に、ジャラっと金属を身に着けて、モデルとかロックバンドなんかやってそうな、とてもきれいな男の人だと伊都は思った。
「いきなりなんだ?」理貴が不機嫌そうに答える。
答えたのは理貴だけど、ここで何をしているのか知りたいのは、自分のことだと伊都は思った。
理貴を心配する仲間がもう一人いた。
「失礼、柏木から、お前が具合悪くてぶっ倒れてるって聞いたから……。
それにしては、豪華な食事してんな」
レストランは、皿ごと運んでくれたみたいだ。
テーブルに納まらないくらい、料理が並んでる。
彼は、無愛想な理貴の態度に、怯むことなく薄い唇をゆがめて笑っている。
伊都は、二人のやり取りを興味深く見ていた。
理貴に対して敬うとか、尊敬するといった、態度を取らない数少ない人だと思った。
とにかく、理貴がやってる事に、素直に思った事が言えるのは、メンバーでは、葵さんだけだなと、伊都は見抜いていた。