「理貴さん?」

気づいたら、伊都に寄り添うように並んで立ち、伊都の腰に手をあて自分の方に引き寄せていた。

彼女の頭のてっぺんにキスをした。


「料理食べよう。実は、それほど食欲が無いんだけど……」


「当たり前です。今日は、雑炊つくるつもりでした」


「本当に?それ、明日に延期出来ない?」


「大丈夫てすよ」

理貴は、伊都が座る椅子を引いた。


ディナーだよと言ったら、この間買ったワンピースを着てきてくれるだろうか?

いっそのこと、店に電話して、食事に相応しい服を一式揃えてあげたい。

そうやって、一歩一歩自分の方に引き寄せようとしてるんだ。

そのうち、気付いて拒絶してくるだろうか。

ままごとみたいな恋愛の最中だろうから。


「美味しい。これ、どうやって味出すんだろう。やってみようかな…」


「簡単には行かないけど。シェフに聞いて作ってみれば」


「ただの女子高生がシェフに会いに行っても、相手にされませんよ」

伊都は、理貴に笑いかけた。