顔を押さえていると、荒い息遣いと女の人の叫ぶ声が聞こえた気がして、顔を上げた。


一気に押し倒され、ベンチの背にぶつかった。


「きゃ?!?!きゃあ!

ちょ、、な、、なに?!」
顔中くんくんされ、はぁはぁと荒い息遣いで抑え込まれる。それは毛むくじゃらで、もふもふで、、

「すいません!!」
やっと身体から引きはがされ『お座り』と命じられていたのは大型の茶色いプードルだった。

「な、、、は、、」
びっくりしすぎて言葉が出てこない。
ぐったりした身体をなんとか起こす。

「すみません、大丈夫、、でしたか??」
女子高生っぽい女の子がお父さんらしき人と一緒に何度も何度も頭を下げている。

「どうもご迷惑おかけしてすみませんでした。ボールを追いかけていたんですが、勢いがよすぎたようで・・」

くううん・・・


大型プードルはいけないことをしたのがわかったのか、主人が謝罪しているのを申し訳なく思ったのか、寂しそうな声を出した。

「大丈夫です。」
それを見ると何だかその大きな体をした犬がまるで郷太みたいで、あたしは親しみがわいた。

郷太はまだ帰ってきていなかった。

「なんて名前なんですか?そのワンちゃん。」
女の子が申し訳なさそうに言った。
「ももって言います。」
手綱はぎゅっと握られていた。

「ももちゃん、可愛いですね。」
女の子はほっとしたのか少し笑顔になっていた。

「本当にどうもすみませんでした。」
謝罪を重ねるお父さんと娘さんとしばらく話をした後、あたしはそのももちゃんを加えて娘さんと笑顔で話をしていた。

いつの間にか、お父さんのほうは少し離れたところで電話を取っているらしかった。

何故か郷太もまだ見えないままだったから、あたしはその女の子としばらく一緒にいた。