「困ったね。。希代香ちゃんまで巻き込みたくはなかったんだよ。。」

おばあちゃまは丸眼鏡を外して目頭をつまんだ。テーブルに置かれた眼鏡が小さな音を立てた。
「そんなに言いにくいこと?おばあちゃま。。」あたしの眉根が寄る。

ひらひら、とおばあちゃまの手が顔の前で揺らされた。

どっちなんだろ?
ますます眉根が寄ってしまう。
ぎゅっと握りしめていた手のひらを開き、とりあえず、カップをひと口すする。

おばあちゃまはちらりとカウンターのほうをみやった。

甘い香りがして、あったかい液体がお腹に落ちていった。
『美味しい』そう言おうとしたあたしの口は、、

ぴたりと止まってしまった。

瞬き。

また瞬き。




「、、今、なんて?」

「おじいちゃまを救い出すために隠居した、と言ったのさ。」

「その後。その後に、、何て?」


「活動を再開させたと言ったのさ。」
おばあちゃまの口元を凝視していた。
「なんの、、」

「だから、にんじゃの。」

「に、、?」

おばあちゃまは至って真面目な顔つきだった。

「に、、?」

「忍者だ。」
背後から響いた声に背中がビリビリッと震えた。