「その足では歩けない。日の入りまでに着きたいが、時間がない。ごちゃごちゃ言わず、しっかり掴まっていろ。」

きゅん、となってしまったのはきっとこの状況のせい。
超美形で逞しい腕にお姫様抱っこされるなんて初めての体験のせいで舞い上がってるせい、、

自分に言い聞かせながら、それでもときめいてしまう心臓。あたしの首は勝手にこくこく頷いている。


言われるまま、そっと首に腕を回す。

「ぁ、、一花さん、荷物はどうするの?」
さっきまで一花さんが背負っていた荷物が背中になかった。
きょろきょろ見回すと、それは足元に見えた。

「後で郷太に取りに来させよう。」
「ここわかるの?」
一花さんは頷いたようだった。

「それから、」
「?」

「一花でいい。六車が言っていただろう。」
ぁ、、と思い出した。

「七花(ななか)かわからないが、おまえも名前ができるまでは・・」

ぐっと抱き直される。
くちびるが近づく。
「やたらと名乗るな。」
かっと体中が熱くなる。

。。。きゅん。。。


「掴まってろ。」
口もきけないくらい、一花さんは言葉通り「跳ぶように」山道を駆け上っていく。

同じような景色が後ろに消えていく。
もしこの腕を離したら、落っこちたら、、

とてもひとりじゃ帰れそうにない。。

改めて首もとに回した腕にぐっと力を込めた。

・・絶対離れない・・!