それなのに。


「あ、俺ポテト食いたい気分。なあ、どう?」

「いいんじゃない? 私も久しぶりに食べたいかも。美冬と雪夜はどう?」

「……べつに、なんでもいい」


この三人は、本当にいつも通り、特別なことなど何もなかったかのように振る舞ってくれている。

それが、なんだか泣きそうになるくらい、嬉しかった。


「美冬? どうしたの、微妙な顔して。ポテト嫌い?」


梨花ちゃんに顔を覗きこまれて、私は首を横に振った。


「微妙な顔、は失礼だろ」と嵐くんが言うと、梨花ちゃんが「ばか、ちがうって!」と慌てたように手を振る。


「微妙な顔っていうのは、変な顔って意味じゃなくて、表情が微妙ってことで」


梨花ちゃんの必死の弁解がおかしくて、私は思わず噴き出して「わかってるよ」と答える。


「あのね、なんか、いいなあって思って。この四人でいるの、とっても居心地がいいなって」


私の言葉に三人が口をつぐんだ。


「梨花ちゃんも嵐くんも雪夜くんも、なんていうか……大人だよね。だから、すごく心地いいな、好きだなあって思ったの」


しばらく沈黙が流れてから、嵐くんが笑い出した。


「なになに? 美冬、それ、告白? 照れちゃうなあ、俺」


からかうように言われて、自分の言葉を再認識して、急に恥ずかしくなってきた。


『好き』だなんて言葉を、誰かに対して口にしたのは、生まれて初めてだった。