次の日は土曜日だったので、私は朝いちばんで電話をかけて施設の人に許可をもらい、昼過ぎにしらとり園を訪れた。


「雪夜くん」


食堂の一角で幼稚園くらいの子供たちと積木遊びをしていた背中に声をかけると、振り向いた彼は唖然とした表情になった。


「え……え? お前、なんで、お前がここに?」


混乱している雪夜くんをよそに、周りの子供たちがわっと歓声をあげて駆け寄ってきた。


「ピアノのお姉ちゃんだ!」

「わあ、久しぶり!」

「今日も弾いてくれるのー?」


何人もに抱きつかれてよろけながら彼らの頭を撫でて、私は「あとでね」と笑った。


「雪夜くんと……話があるから」


じっと見つめてそう言うと、雪夜くんの顔がみるみる険しくなっていった。


「……どういう、ことだ?」


私は何も答えず、彼の手をそっとつかむ。

見ていた子供たちの一人が、「ひゅーひゅー!」とはやし立ててきた。


それに笑みで応えて、私は雪夜くんの手を引いて歩き出す。

「なにー? デート?」と騒ぐ子供たちの声を背中で聞きながら、私たちは施設の外へ向かった。


雪夜くんは何も言わない。

足を止めて振り向き、正面で向かい合うと、彼は真っ青な顔をしていた。