覚悟は決まっていた。

もう私は、全てを受け入れる覚悟ができている。


『十二月一日。』


最初の日付はそれだった。

まだ中学二年生だった頃の私が、そこにいた。


『今週の日曜日、白取町にあるしらとり園という施設にピアノを弾きに行くことになった。久しぶりに人前で弾くから、ちゃんと練習しなきゃ。』


ページをめくる。


『十二月六日。明日はしらとり園での訪問演奏会の日。たくさん練習したけど、うまくいくか心配。緊張する。でも、三年生になったら受験のためにピアノ教室はやめるから、きっとこれが最後の発表会。頑張ろう。』


もう一ページめくる。

きっとこのページを読んだら、もう後戻りはできない。


心臓が口から飛び出してしまいそうだった。


『十二月七日。』


瞼を閉じて、呼吸を整える。

ゆっくりと瞬きをしてから、文字を目で追い始めた。


『雪夜くんという男の子に助けてもらった。』


せっかくおさまりかけた心臓をわしづかみにされる。


いきなりこの名前が出てくるなんて。

それだけ、あの頃の私にとって、彼との出会いが衝撃的で、印象的で、大きな出来事だったのだと思う。


そして次の行に視線を走らせた、その瞬間。


『雪夜くんのギターと私のピアノで、一緒に演奏した。』


想いが、溢れた。


そうだ、と呟く。

目が熱くなって、視界がじわりと滲んで、涙が溢れた。


「……ごめんね、雪夜くん。ここにいたんだね……」


日記を閉じて、抱き締める。


頭の中の靄が完全に晴れたのを感じた。

私はとうとう、全てを思い出したのだ。