その晩、不思議な夢を見た。


真っ白な世界の真ん中に、私は一人ぽつんと立っている。

とても綺麗で、でも、どこかさみしい場所。


しばらくすると、どこかから微かな音が聴こえてきた。

私はあたりを見渡して、音のありかを探して歩く。


だんだんと音が大きくなって、それは誰かの声らしいと気がつく。

耳を澄ませると、子供の泣き声だと分かった。


小さな小さな子供が、ひとりぼっちで泣いている。


私は急に悲しくなって、どうにかその子を探し出し、助けてあげなくてはいけない、と思う。


やっと見つけたその子は、まだ幼い男の子だった。


『どうしたの? どうして泣いてるの?』


傍に駆け寄り、声をかける。

真っ黒な服を着た男の子は、両手で顔を覆ったまま、嗚咽を漏らして泣き続ける。


その泣き方が、あまりにも悲しそうで、苦しそうで、切なくて、私は思わず、男の子の小さな身体を抱きしめた。


『どうして、きみは、そんなに悲しそうなの?』


耳許で訊ねると、男の子は泣きながら答えた。


『ぼくが、こわしちゃったから』


しゃくりあげながら、切れ切れに言う。


『ぼくが、あの子の………を、こわしちゃったから。うばっちゃったから』


あの子って? と訊ね返すと、男の子が顔を覆っていた手を片方だけ外し、向こうを指差した。