「うるさいな」
「お、ひょっとして図星? なんなら俺がもらってやってもいいぞ」
「冗談でしょ。大輝にあげるくらいなら自分で食べるわよ」
「そんな言い方するなよな~。こう見えて俺だってへこんでるんだぞ」

 大輝が私の前の席に腰を下ろした。

「なんで大輝がへこんでるのよ。男子に人気の池田さんからチョコもらったんでしょ?」
「気になる?」
「なるわけないでしょ」

 大輝が私の目の前で肘をついた。

 距離が近いんですけど。でも、大輝は私のことを女だと思ってないから、当然か。

「少しくらい気にしろよ」
「気にしたくありませ~ん」

 大輝が肘をついた手で前髪をくしゃりと握った。

「だよなぁ。俺が好きな女にチョコをもらえなくてへこんでても、有純は気にもならないんだよなぁ」

 大輝が深いため息をついた。

 いつもおちゃらけた大輝がため息をつくなんて珍しい。よっぽど落ち込んでるんだろうか。なんだか気の毒になってくる。