翌日、四限目の都市環境情報の講義で、私は大輝の姿を見つけた。大輝は窓際の席にひとりでぽつんと座っている。友達の多い彼にしたら珍しいことだ。

 昨日はあれから池田さんとどうしたんだろう。気になるけど、わざわざ聞きたくはない。同性の私から見ても守ってあげたくなるような女の子らしい池田さんに呼び出されて、いそいそとついていった大輝のことだ。その後どうなったかなんて、言わずもがな、だろう。

 ああ、もうやってらんない。

 昨日は麻里と義理チョコと友チョコを配り終えた後、大輝のために買った生チョコをヤケ食いしてやろうと思った。でも、できなかった。大輝に“ありがとう”と“好き”の気持ちを伝えたくて買ったものだから、その気持ちを自分で消すことなんてできなかったのだ。

 あーあ、バカみたい。消しちゃえばよかったのに。

 机に突っ伏して、頭を抱えた。年配の教授の抑揚のない声を聞きながら、じっと考える。

 もうバレンタインは終わったんだ。

 よし、大輝への気持ちなんて消しちゃおう。食べてなくなっちゃえば、“大輝を好き”って気持ちだって消えてなくなるんじゃないかな。

 そんなこじつけのようなことを思いつき、私は講義が終わるのを待った。眠くなりそうな講義が終わって、学生が――大輝も含めて――みんな出て行った後、トートバッグから生チョコの入った小箱を取り出した。