生チョコレートの魔法が解ける前に

「酔ってるついでに、ずっとやりたかったこともやっておく」

 大輝が顔を赤くしたまま傾け、彼の顔が迫ってきたかと思うと、私の唇に彼の唇が触れた。そっと触れたやわらかな唇はすぐに離れ、彼が耳まで赤く染まった顔を背けた。

 私も気恥ずかしくて、視線を落とす。

「酔ってるついでっていうのはちょっとないんじゃないの……」
「だよな。じゃあ、生チョコの魔法にかかったってことで」
「くさっ」

 思わず大輝の方を見たら、少し怒った顔の彼と目が合った。

「っせーな。焼酎くさいのはお互い様だろ」
「そのくさいじゃないってば」

 私が言うと、大輝の右手が私の後頭部に回され、彼の方にぐいっと引き寄せられた。目の前にふてくされたような彼の顔がある。

「うるさいからしばらく黙ってろ」

 そうして唇をキスで塞がれた。さっきよりも深く重ねられた唇は、ほんのりとチョコレートと焼酎の香りがした。


【了】