生チョコレートの魔法が解ける前に

「んじゃ、遠慮なく。おまえの恋心を食い尽くしてやる」
「なんかヤな言い方」
「ほれ、貸せ」

 大輝が言って、私の指の間からフォークを抜き取った。そして刺さったままの生チョコを口に運ぶ。

「うま。これは……焼酎の生チョコか」
「うん。私のなんだから私にもちょうだいよね」
「これなんの焼酎? 説明書とかないの?」

 大輝が言いながら私にフォークを差し出した。

「さあ」

 私がフォークで生チョコを刺して口に入れたとき、大輝が包装紙の陰に隠れていたカードに気づいた。

「あるじゃん、説明書」
「あ、それ違うっ」

 私が手を伸ばしたときには、大輝はそのカードを取り上げていた。

「なになに? To TAIKI いつも素直になれないけど、でも本当は……」
「見るなーっ」

 私は大輝の手からカードを引ったくった。大輝が瞬きをして私を見る。

「TAIKIって、まさか俺!?」