「…申し訳ございません…キュリオ様…」


「……」


消え入りそうな声で吐き出したアオイの言葉がキュリオに届いたかどうかはわからない。
しかし彼はそれ以上言及せず、無言のまま再びカップを手にとった。


「……」

(時々…お父様がわからない…)

(…心配して下さっているのはわかるけど、本当にそれだけ…?)


本来、スカーレットとマゼンタから正体を隠すための名目だけの"侍女"だったはずだが、今となってはまるでキュリオ専属の侍女だ。

しかもその一挙一動を監視され、彼の意志にそぐわない行動をとれば即座に注意を受けてしまう。


視線や態度を制限されてしまったアオイが自由を許されているのはもはや聴覚と思考回路くらいのものだ。


(…お父様に隙なんてない…このままじゃただ時間が過ぎて…)


こうして目に見えない"キュリオという名の鎖"に繋がれてしまったアオイだが、この後…思いも寄らぬ助っ人(?)が鎖を断ち切ってくれるとは思いもせず…少女はただ立ちつくしていた―――。