"それでは第二戦・玉入れ競争の結果発表を行います!!"




若き天才魔導師の声が響き渡ると、各組の籠を囲みながら荒い呼吸を整え、爽やかな汗をぬぐう者たちの視線がアレスのいる大会本部へと一斉に向けられた。



(…スカーレットさん凄い…)

完全なる彼女の働きにより赤組の籠は溢れんばかりの赤い体積で、堂々と誇らしげに籠をしならせていた。


「これなら青組にも勝てそうだね!」


「…そうですね」


しかし嬉しそうなアオイとは逆に…隣りにいる若い剣士は面白くなさそうに答えた。


「カイ…?どうしたの?」


親しい剣士に向き直り、アオイ一歩彼に近づこうとすると…


「アオイは気にするな。こいつはようやく自分の弱さに気づいて落ち込んでるだけだ」


逞しい腕に肩を抱き寄せられ、端整なスカーレットの顔がぐっと近づく。



「カイが弱いなんて…そんな事っ!」



否定しようとしたアオイの言葉はアレスの声にかき消され…





"―――第1位―――…"




"―――青組!!そして第2位…赤組!!"




「…なっ…!!」



限界まで投げ入れたはずの赤組の籠と、わずかに離れた場所にある青組の籠を見比べるスカーレット。



(いくらなんでもあと1つの玉も入らない…同じ数ならば赤組が二位に転落するはずは…っ…)



無理にでも投げてしまえば、行き場をなくしたほかの玉が零れ落ちてしまう。隙間さえも計算の上投げ入れられたスカーレットの作戦は完璧だったはずだ。

しかし…


「どんなゲームにもルールというものがある」


そう言って低い声を響かせた銀髪の男はアオイからスカーレットの腕を跳ねのけると彼女を引き寄せる。


「…キュリオ様。玉入れ競争にルールなど…数以外になにかございますか?それとも俺は部外者故にカウントには入らないと?」


「君が赤組に入る事は問題ない。しかし…」


「その分、同じ玉の数で競うのならば赤組は負けということだ」


つまりキュリオのいう事はこうだ。
青組50名、籠に入った玉数50個だとすれば…
赤組51名、籠に入った玉数50個では赤組が負ける。

スカーレットが加入した分だけ多くの玉を入れる必要があったという事になり、限界まで投げ入れられた二つの籠はまさに同じ数であったことから…それが赤組が2位となった所以(ゆえん)だった。