(珍しい毛色の娘だな…)


スカーレットに探るような眼差しを向けられたアオイは萎縮し、カイの背に隠れてしまった。


「……」


するとそれに気づいたキュリオがスカーレットの視界を遮るように前に出る。


「…スカーレット、君は女神一族の中でも特に賢い。だからこそ言っておこう」


真っ直ぐに見据えられた長身のキュリオはスカーレットの赤い髪を映して、まるで炎を宿しているかの如くその目を光らせた。


「……」

(…冷静なキュリオ様が珍しい…)


穏やかで深い愛をもつ悠久の王が感情をあらわにする事は滅多になく、彼をそうさせた理由がどこかにあるのだと改めて実感させられる。

やがて重々しく口を開いたキュリオの言葉がスカーレットの疑問を明確なものへと変えていく。


「…ここが私の庭であることを忘れないで欲しい」


腹に響くようなキュリオの低い声は、スカーレットの探りをこれ以上入れさせないための牽制だった。


「…申し訳ございません」

(キュリオ様がこうまでも警戒されるのはウィスタリアの一件からか…?それとも…)


心からの謝罪を言葉にのせるスカーレットだが、突如目の前に立ちはだかったキュリオの行動に違和感が付きまとう。



(キュリオ様はいまなにを隠された…?)