「…はい」


振り返ったアオイは何か言いたげなキュリオの視線を受けたまま左隣りへ座ると…


「…っ…」


突如重なった右手のぬくもりにアオイの背が震え…その熱がキュリオのものであると確認するに時間はかからなかった。



「…お父様…?」



「…せっかく近づいたと思ったお前との距離が…また遠くなってしまったな」



キュリオの脳裏をボートで過ごしたあの幸せな時間が幻のように過ぎ去っていく。それはまるで夢のようなひとときで、キュリオが待ち望んだ…初めて親子の枠を越える事が出来たと思った瞬間だった。


「そんなことは…っ…」


キュリオの言葉の意味がわかっていないアオイは慌てて否定するが、重ねられていたキュリオの手は素っ気なく離れていく。






「…私の言いたいことが伝わっていない以上、最初から近づいていなかったのかもしれないな」