「ひぇっ!!」

(どうしようバレちゃった…っ…!!)


「ご、ごめんなさいお父様っ!!嘘ついて…っ私…!!」


即座に父親の膝から降りようとしたアオイの腰をキュリオの腕が強く引き寄せた。


「…民からの献上品を手にしないのは私の意志だ」


「…お父様…」


「私は幸い満ち足りている。だからこそそれは必要としている民のもとへ届ける」


「……」

(…孤児院へという意味がわかった気がする…)


「しかし…」


「…私でも欲しくてしょうがない物が一つだけ存在するんだ」


「…お父様が欲しいもの?ですか?」


「あぁ、お前の心がこもった物だよ」


「で、でも…例外はないって…」


"…ひとつ残らず孤児院へ。例外はない"


先程の会話を思い出し、アオイの胸が切なく痛んだ。


「あぁ、すまなかった。まさかお前が用意していてくれているとは夢にも思わなかったんだ」


「アオイをこの腕に抱いたときからお前の愛を渇望してやまない私が生まれ、同時に私の中のルールに当て嵌まらない唯一の人物が誕生した」


「…それって…」


「もちろんお前だ。お前が与えてくれるものは喜んで受け取ろう。そして…私がアオイに与えるもの全て…お前にも受け取って欲しい」


キュリオの真っ直ぐな瞳がアオイを見つめている。
空色の瞳の奥に宿すのは親子の絆を越えた愛を求めてやまないキュリオの願望と…


「はい…っ!もちろんですお父様っ!!」


嬉しさのあまりキュリオの首に腕をまわして抱き着く彼女の背を幸せそうな微笑みを浮かべて抱きしめるキュリオ。


「アオイ…ひとつ聞いてもいいかい?」


「はいっ!」


それまで穏やかだったキュリオの口調がわずかに低くなった気がする。
そして紡がれた言葉は…




「…私以外の者にも用意しているのかな」




アオイを愛すれば愛するほどに膨れ上がる嫉妬の炎だった―――。