「…っわ、わたしがっ…お父様に?」


まさかそんな事を言われるとは思わなかったアオイは女官を振り返りながら戸惑いの表情を浮かべている。


(私も意地が悪いな…)


ふっと笑ったキュリオは全ての出来事を把握してからは心に余裕が出来たようだ。
まるでアオイの反応を楽しむように次の行動を今か今かと待ちわびている。


『姫様、キュリオ様とどうかお幸せな時間をお過ごしくださいませっ♪』


にこりと聖母のような笑みを浮かべた女官がアオイへと耳打ちをする。


『で、でも…っ…』


まだキュリオにバレていないと思い込んでいるアオイだが、女官はすでに気付いているようだ。
もう悪い方向には進まないと判断した彼女は一礼しながら広間を出て行ってしまった。


「…あっ…」


すがる思いで女官の背を見つめていたアオイに注がれる別の視線。


「そろそろ時間が押しているな…」


「え…」


キュリオの声にドキリとしたアオイがキュリオを振り返ると…


「アオイせっかくだが…」


今にも立ち上がろうとしているキュリオの姿が目に入った。

もちろんこれも彼の"演出"である。