ほどなくしてミキが教室へやってくると、いつもの仲良し三人組の無邪気な笑顔が並んで花咲く。
「今朝ね、ミキが言ってたパン屋さん見つけたの。赤い屋根のガラス張りのお店。すごくいい匂いがしててっ」
両手を合わせ、瞳をキラキラさせながら声を弾ませるアオイにミキは満足そうに大きく頷いた。
「あの店さ、結構遅い時間まで開いてるんだよ! いつ行っても焼きたてのパンがたくさん並んでてさ~! アオイもお父様に買って行ってあげたら?」
ミキの口調から察するにかなり通っているであろうことがよく伝わってくる。
「ミキのお家はあのお店から近いの?」
「んー、ちょっと? だいぶかな? まあまあ離れてるよー」
そういえばミキと同じ道を帰ったことがないことに気づいたアオイは、自分が知る限りの悠久の街並みを頭の中に描く。
「お、俺さ! あの商店街の裏通りにある店でバイトしてんだ!! 結構料理も美味いんだぜっ! だ、だからっ……」
身を乗り出して突然主張し始めたシュウにアオイは笑顔で返す。
「偉いねシュウ。シュウの夢は料理人さんかな?」
遠回しな誘いは通用しなかったものの、アオイに褒められて舞い上がってしまいそうになる気持ちを抑えながらシュウの言葉は続く。
「料理もバイトも自分が食うために仕方なくやってきたって感じだけどさ……アオイが食ってくれるなら……俺、毎日すげぇ楽しいだろうなって、そう思えるんだ!」
シュウの愛は止まらない。
アオイのことが好きすぎてどうにかなりそうな彼は、日々伝わらない愛の告白にヤキモキしている。
そしてそれは今日も――
「ありがとう。その時は、ちゃんとお金払うね」
学園に入ってから、物を頂くときには対価となる金銭が必要であることをアオイは学んだ。
ひとりでどこかの店へ入ってみたいという願望はあるものの、何せ勝手がわからないアオイにとってそれはとても勇気のいる行動だったのだ。
「はいっ! シュウ撃沈~!!」
机に項垂れるシュウを横目で見ながら高笑いしているミキにアオイは首を傾げる。
と、その時教室の扉が開いて――
「ホームルームを始めるぞー」
出席簿を片手に入室してきた担任教師。
だが、生徒たちは彼にまるで興味を抱くことなくもうひとりの姿を心待ちにしている。そんな生徒たちの期待を裏切るかのようにその教師は自分が扉をくぐると、そのまま扉を閉めてしまった。
「あれ……? アラン先生は?」
いつもならば担任教師の隣に並んで立つ麗しい銀髪の副担任の姿がない。
にわかにザワつく生徒たちの声を制するように、教卓へと出席簿を置いた彼はこう言い放った。
「アラン先生は本日体調不良のためお休みだ。皆も風邪などには十分気を付けるようにー」
「……っ!」
(え……、お父様が……体調不良……)
「今朝ね、ミキが言ってたパン屋さん見つけたの。赤い屋根のガラス張りのお店。すごくいい匂いがしててっ」
両手を合わせ、瞳をキラキラさせながら声を弾ませるアオイにミキは満足そうに大きく頷いた。
「あの店さ、結構遅い時間まで開いてるんだよ! いつ行っても焼きたてのパンがたくさん並んでてさ~! アオイもお父様に買って行ってあげたら?」
ミキの口調から察するにかなり通っているであろうことがよく伝わってくる。
「ミキのお家はあのお店から近いの?」
「んー、ちょっと? だいぶかな? まあまあ離れてるよー」
そういえばミキと同じ道を帰ったことがないことに気づいたアオイは、自分が知る限りの悠久の街並みを頭の中に描く。
「お、俺さ! あの商店街の裏通りにある店でバイトしてんだ!! 結構料理も美味いんだぜっ! だ、だからっ……」
身を乗り出して突然主張し始めたシュウにアオイは笑顔で返す。
「偉いねシュウ。シュウの夢は料理人さんかな?」
遠回しな誘いは通用しなかったものの、アオイに褒められて舞い上がってしまいそうになる気持ちを抑えながらシュウの言葉は続く。
「料理もバイトも自分が食うために仕方なくやってきたって感じだけどさ……アオイが食ってくれるなら……俺、毎日すげぇ楽しいだろうなって、そう思えるんだ!」
シュウの愛は止まらない。
アオイのことが好きすぎてどうにかなりそうな彼は、日々伝わらない愛の告白にヤキモキしている。
そしてそれは今日も――
「ありがとう。その時は、ちゃんとお金払うね」
学園に入ってから、物を頂くときには対価となる金銭が必要であることをアオイは学んだ。
ひとりでどこかの店へ入ってみたいという願望はあるものの、何せ勝手がわからないアオイにとってそれはとても勇気のいる行動だったのだ。
「はいっ! シュウ撃沈~!!」
机に項垂れるシュウを横目で見ながら高笑いしているミキにアオイは首を傾げる。
と、その時教室の扉が開いて――
「ホームルームを始めるぞー」
出席簿を片手に入室してきた担任教師。
だが、生徒たちは彼にまるで興味を抱くことなくもうひとりの姿を心待ちにしている。そんな生徒たちの期待を裏切るかのようにその教師は自分が扉をくぐると、そのまま扉を閉めてしまった。
「あれ……? アラン先生は?」
いつもならば担任教師の隣に並んで立つ麗しい銀髪の副担任の姿がない。
にわかにザワつく生徒たちの声を制するように、教卓へと出席簿を置いた彼はこう言い放った。
「アラン先生は本日体調不良のためお休みだ。皆も風邪などには十分気を付けるようにー」
「……っ!」
(え……、お父様が……体調不良……)



