「これを私に開けろと?」

 とりあえず先に進もうと考えたキュリオがもう一度小箱を見つめる。
 そこにある華凜なブーケの束は以前からよくアオイに贈っているミニバラであることはやはり間違いなく、不器用ながらも丁寧に棘が削られている。
 アオイの頷きとともに可愛らしい赤のリボンをほどいていくと――

 やや歪に丸められたチョコレートと思しきそれは、綺麗に雪化粧ならぬココア化粧されて並んでいた。

「…………」

(これは……職人技とは言えないが……)

 やがてキュリオの視線はそれを差し出したアオイへと向けられて。
 不安そうにこちらの反応を伺っている彼女を見たキュリオは自身の仮説が正しいことを確信した。

(……なるほど、そういう事か……)

 城の中庭にしか咲かぬバラの品種とそぎ落とされた棘。そして早朝から姿を見せない娘と痛々しい指先の刺し傷に、歪なチョコレート。


 まさしくそれら全てはアオイの手作りである事を意味していた――。