「…………」

 強制的にベッドへ寝かされてしまったアオイ。硬めのシーツと枕のカバーは適度な快適さを保ちながらも、なかなか安眠を与えてはくれなかった。

(さっきカイが言ってたのってこういうことかな……)

"貴方を縛り付けておくことが許される、唯一のお方だから――"

(いままでお父様に守られてる自覚はあったけれど、縛られているなんて思ってもみなかった……)

"判断を誤る年端もいかない子供を管理するのは親の役目だ"

(でも、お父様の言われることも間違ってなくて……)

 頭と心を整理しきれないアオイはアランに扮したキュリオに背を向けながら真っ白なシーツを頭から被る。

(……この息苦しさは、なに……?)

 無理矢理目を閉じてみても、沸々と湧き上がる不安定な感情が胸をざわつかせる。
 持て余した想いが溜息となって唇の端から零れると、わずかに軋んだベッドに体が強張る。

――ギィッ

「……っ!」

(……嘘、アラン先生……?)

 まさか学校のベッドで枕を共にしようというのか? 
 揺れ動いた背後へ意識を集中させながらも色々な考えが脳裏をめぐる。
 いつ急病人が入室してくるともわからない保健室で、いくらなんでもそれはないだろうと自分に言いきかせてみても、彼をよく知る頭は警鐘を鳴り響かせる。

「…………」

 しかし、それっきり動く気配のないアラン。
 やはり教師を語っているだけあって、その辺は取り越し苦労だったと安堵していると、視界を覆っていたシーツが取り払われ……

「ひとりで眠れないのなら添い寝をしようか?」

 首元を寛(くつろ)げたアランが、溢れる色香を存分に放ちながら目の前で微笑んだ――。