様々なスイーツが運ばれてくるなか、目の前のアオイはせわしなく何かを探しているように見えた。

「…………」

(赤いリボンの小箱は……)

「…………」

(アオイ……一体なにを探している?)

すると、愛しい娘の瞳が輝いて。

「お父様っ! こちらですっ!」

「……?」

 キュリオが怪訝な顔をするのは無理もない。甘い物が食べたいと言う割に、アオイはその話題をこちらに振ってきたからだ。大事そうに女官の手によって運ばれてきた銀のトレイの上には、なにやら可愛らしく飾り付けされた小箱がひとつ乗っている。

「…………」

(ピンクのミニバラ? ……この花びらは……)

 悠久の城に咲くバラには些か特徴がある。
 その中心はやや色が濃く、外側にいくにしたがって日に透けるような淡い色へと変化しているからだ。それも歴代の悠久の王たちがバラをこよなく愛し、いつかの時代に品種改良されたという噂もあるくらいだ。その証拠に他では咲かないバラが城の中庭にはたくさんあった。

 もちろんそのことを知らないアオイは、ここで見たバラを何も変わらない普通の品種だと思い込んでいる。

「ここのお店、チョコレートがおいしいって聞いて……」

「…………」

 バラをじっと見つめていたキュリオが疑いの眼差しを今度はアオイへと向けてきた。