そして陽だまりの中、視界に飛び込んできたのは目を見開いて年頃の少女を抱きかかえるダルドと……

「アオイ……?」

「……?」

キュリオの声に振りかえったのは紛れもなく生身のアオイだった。

「……お父様……っ!」

胸に飛び込んできた愛娘を力いっぱい抱きしめたキュリオ。

「すまない……つらい思いをさせてしまったね。私の寝室で眠らないよう手紙に記したのは、夜遅く朝の早い私のせいでアオイが起きてしまうのではないかと……」

「いいえ……最初からわかっていたはずなんです。お父様が私を突き放すわけないって。それを信じきれなかった私が悪いんですっ……ごめんなさい! ただ小さくなって一緒に居たい、本音が知りたいだなんて願ったりしたから……っ……」

「……謝らなくていい。私も同じことを……。……?」

アオイの想いを聞き、微笑んだキュリオは語尾に疑問符をつけた。

「お父様……?」

猫になってしまったことを自白しようとしたアオイの言葉は遮られ、つられて父親の視線を追う。

「ふふっ寝間着のままここまで来たのかと思ってね。それにこれは……チョーカー?」

(花まで……)

「……それ、解(ほど)けないんだ」

二人の距離がわずかに離れ、立ち尽くしていたダルドがようやく近づいてきた。
自分よりも早くアオイを見つけた彼に聞きたいことはいくつかあるが、ダルドの口調からチョーカーをつけたのが彼ではないことが推測できる。

「それほど固く結ばれているようには見えないが……大事なものなのかい?」

「……え!? えっと……そのっ……」

急に視線を逸らし口籠ってしまった娘の代わりにダルドが答える。

「迷った先でもらったんだって」

『ぼんやりしていると飼い猫にしたがる輩に"また"連れ去られますよ』

(……何か知ってるのはダルドよりマダラのほうか)