――そして自室へと戻ってきたヴァンパイアの王。
彼の持つ銀の皿には香ばしいかおりを放つ火の通された新鮮な肉と、焼きたてのアップルパイが並んでいる。

「まぁこんなもんか?」

どこか楽しそうな足取りで扉を開けると自然と、とある名前が口をついででる。

「アオイ、飯の時間だぜ」

「寝るなら飯食ってからに……」

子猫が眠っていたはずのベッドの上を覗くが姿はない。

(……また隣の部屋か?)

結局彼女の姿はどこにもなく、ひとりで抜けられない扉を考えれば可能性はただひとつ。

「マダラでも来やがったか……」